じゅて~む エッセイ編 第117夜

あらすじ

富山県在住のエッセイスト、達太は、実はエッセイストであるのは日曜だけ。

月曜~金曜は会社員。

ビルの14階でサラリーマンをし、一日に何度も1階の食堂へ足を運び、生姜焼き定食とうどんを当たり前に食べている。定食を作った人の気も知れず、足りないと、うどんをセットして。

牛丼を繰り返し食べに1階の食堂へ行くこともある。

それゆえ達太は、ビルに出入りする人間の中で、一番エレベーターに乗っている自信がある。

「俺ほどエレベーターを乗りこなしている人間はこのビルには居ない。」

1階の食堂でカツ丼を食べながら、エレベーターで14階にぐいぐい登っていく自分を想像し、

達太はうっとりする。

ところが。

日曜。

達太はエッセイではなく映画のシナリオを書いてしまった・・・。

シナリオライターの才能が開花してしまった達太。

しかも、一度は結婚を約束した男女がスレ違いの末、それぞれの道を歩く始めるという・・・。

悲恋のシナリオで華々しくデビューすることに。

お祝いに焼き肉パーティを開かねば・・・さて、誰を招待しようか。

達太の悩みは尽きない・・・。


恋愛映画『三倉マナのそっくりさん、カナ、現る! 』
シナリオ ミスじゅて~む宮村

【テレビ局の廊下にて。男2人がすれ違う。】

前田「おー、ムラオカ、久しぶりじゃねえか。」

岡村「お久しぶりっす。」

岡村心の声「面倒な奴に捕まったぜ・・・。俺は岡村だ、村岡じゃねぇっつの。

紛らわしいだけで全然業界ぽく呼べてねえし。」

前田「お前、まっだADのアシスタントらしいじゃん?

ADって、ディレクターのアシスタントだぜ?

お前、そのアシスタントって、どんだけアシストすんだよ?

お前はサッカー選手か!なんつって!」

岡村心の声「うまく言った風に言いやがって。

サッカー選手へのリスペクトがだだ漏れなんだよ。」

岡村「あはは。まあ、やりがいは感じてるっす。アシスト好きっす、サッカー選手っす。」

岡村心の声「前田はいつも俺の『ADのアシスタント』という仕事をバカにしてくる。

俺だってやりたくてやってるわけじゃない。

そろそろガツンとディレクターに成り上がらないと。

テレビの世界で食っていけないって。」

前田「あっそ。せいぜいサッカー選手するんだな。んじゃ元気でな。」

岡村「前田さんも!ではさよなら!」

岡村心の声「前田のつまらん冗談のせいで一人もサッカー選手がいないこの場に

サッカー選手が2人もいるみたくなっちまったじゃねえか、くっそ。

いつか見返してやる。いつか立派な番組ディレクターになってやる!

ホームレスの前田がグウの根も出ないような!!」

【数日後。岡村はテレビ局内で、三倉マナにそっくりの女とすれ違う】

岡村「お疲れ様です。」

三倉カナ「お疲れ様です。」

岡村「あの。三倉マナさんですよね。うわ、本物だ。」

三倉カナ「ううん。あたしはカナ。」

岡村「は?」

三倉カナ「あたしは、カナ!」

岡村「まじっすか。」

三倉カナ「うん。」

岡村心の声「おいおい。お宝発見だ。このカナって女、三倉マナそっくりだぞ。

このカナって女を三倉マナに引き合わせる番組を作るんだ!

日本中が、驚くぞ、そして夢中になるぞ。

三倉マナそっくりの女、カナの登場に!!

大谷翔平の登板も、羽生譲の2回転ジャンプも、目じゃねえ!

藤井聡太くんが天童市を旅行する番組にはさすがに勝てる気がしないが。」

岡村更に心の声「ああ!俺がスポーツ新聞しか読んでない事がバレてしまう!

業界人なのに芸能ニュースを一切知らない!!!」

三倉カナ「じゃあ、あたし、いくね。」

岡村「ちょっと待って。俺、ADのアシスタントやってる岡村ってもんだけど、

俺と組んで、ヒトヤマ当てようよ。」

三倉カナ「ヒトヤマ?」

岡村「ああ。三倉カナって知ってるだろ?芸能人さ。」

三倉カナ「知ってる知ってる当たり前!」

岡村「なら話は早いや。」

三倉カナ「?」

岡村「あんたは自分じゃ気付いちゃいないようだが、三倉マナそっくりだ。

それを利用するのさ。利用して番組を作るのさ。

番組名は『三倉マナのそっくりさん、カナ、現る!』が最適だろう・・・。」

三倉カナ「何言ってるのお前。そんなん全然世間は沸かないよ。」

三倉カナ心の声「あ、初対面の人に『お前』って言っちゃった・・・。

      どうしよう。失礼だったよね。でもこの人があまりに変な事いうから。」

岡村「いいや沸くね。」

三倉カナ「岡村さん、ふたりっこって朝ドラ見てないの?」

岡村「ふた、りっ、こ??朝、ドラ??」

三倉カナ「やっぱりね。」

三倉カナ心の声「この人大丈夫かなあ。テレビの世界の人なのに朝ドラ知らないなんて。

      心配。ほっとけない。」

岡村「何だよ、もったいぶるなあ。三倉マナのそっくりさんのくせに。」

三倉カナ「じゃあ賭けをしよう。」

岡村「賭け?」

三倉カナ「その『三倉マナのそっくりさん、カナ、現る!』ていう番組が、

視聴率20パーを超えたら、岡村さんの勝ち。結婚してあげる。」

岡村「え!俺が、三倉マナのそっくりさんと!?結婚??贅沢すぎない??」

三倉カナ「さっきは『そっくりさんのくせに』って言ってたくせに。」

岡村「それは、その、言葉のマヤってやつさ。」

岡村心の声「しまった!浮かれてて『言葉のあや』を『言葉のマヤ』って言ってしまった。

マヤ文明に執着するオカルトな男と思われたかな・・・。」

三倉カナ「ありがと。でも、ただし、『三倉マナのそっくりさん、カナ、現る!』

が視聴率20パを超えなかったら・・・」

岡村「パを、超えなかったら?」

三倉カナ「・・・責任をとってもらうわ。」

岡村「責任?責任て、責任?その賭け、のった!」

岡村心の声「どっちにせよ、この女と結婚できるじゃねえか!」

【後日。もちろん、そんな番組は制作されず、なので視聴率もわからず、

どう転んでも三倉カナと結婚できそうだった賭けは成り立たず、

岡村と三倉カナが連絡をとることもなかった。

岡村は失恋の悲しみからテレビを逆恨みし、証券業界で働く事に。

ついでにホームレスの前田も証券業界で働き始めることに、なる。】

じゅて~む、俺のシナリオライターデビュを祝おう

じゅて~む

【あらすじ】 N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、 架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。 そして、達太の外見は、39歳にして徳川家康公にそっくりであった・・・。

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