じゅて~む エッセイ編 第十九夜
N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。
タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。
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まずは自己紹介から。
俺の名前は達太。会社員。
39歳、独身。
恋人募集中だった。なぜ過去形か。恋人ができたか、いや違う。
ただただ、募集を取り下げただけだ。意味はない。
これからも募集をしたり、取り下げたりを繰り返してゆく。
ところで。
先日、鏡を見て驚いた。鏡の中に、藤岡弘が現れた。
だが、どうも様子がおかしい。
藤岡弘が30㎏の増量に成功したような様子なのだ。
役作りか。
とりあえず、サインをもらおうと色紙を準備し、「増量なんて役者魂ですね」とのコメントも用意したのだが、
驚いたことに30㎏の増量に成功した藤岡弘も手に色紙を持っていた・・・。
俺は色紙を床に落っことす。
鏡の中の藤岡弘も色紙を床に落っことす。
とんちだ。ホラーではない。
わかった読者はいるか。
読者がどんどん減っているが、大丈夫か、いるか。
じゅて~む、愛しているよ。おいで。
つまり。
藤岡弘は俺だったのだ。
29歳の頃。
鏡の中に、音楽家のバッハが現れて驚いたことがあった。
そういうことだ。
なぜ恋人募集を取り下げるのか、
簡単な理由だ。
恋人とドライブに出掛ける。
会話が途切れる。
俺は「しりとり」でもしようと提案する。
恋人は「懐かしいわね。でも楽しそう!」と言ってくれる。彼女は心も美しいのだ。
だが。俺は腹が減りだす。
しかし、女の機嫌を損ねることなく、女に気付かれずに、3分内に食べきることができる食事など「丼もの」しかない。
しかし「しりとり」は容赦なくスタート。
俺は、ウサギ、牛丼、の流れで負ける。
スイカ、海鮮丼、で負ける。
負けてばかり。
しかし、ここまではいい。女も楽しそうだ。
俺がしりとりそっちのけで、リスの後に、麻婆丼を繰り出し、ムードが怪しくなる。
女が何を挙げようと、ルールそっちのけで、丼ものを述べる遊びを、俺が始めてしまったのだ。
天丼、ネギトロ丼、豚丼、卵丼、親子丼、サケいくら丼、うな丼。
勝手に「ん」のつく食べ物を述べ「負けたー」と悔しがる俺に、女は困惑する。
そして。牛丼特盛。天丼&ミニうどんセット。カツ丼ダブル。
「ん」で終わっていないのに「負けたー」と悔しがる俺に女は困惑気味だ。
恋愛は素晴らしい。
しかし、面倒だ。
じゅて~む。
むらさき。
金色。
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