じゅて~む エッセイ編 第二十夜
【あらすじ】
N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。
タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。
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まずは自己紹介から。
俺は達太。高木ブー似の39歳、会社員だ。
中身はスタイリッシュでスマートだ、安心して欲しい。
しかし、誘拐されてしまった。
いや、幽閉というべきか。
だから安心しないで欲しい。
とにかく、さらわれてしまったのだ。
俺をさらうのは大変だったろう。
まず、俺は疑り深い。
「ぼうや、キャンディーをあげよう」と誘われても、
「いや。キャンディーは結構。牛丼のクーポンも結構。牛丼の実物がここにあれば実費で食わせてもらう。」
と返す男だ。
それに俺を「ぼうや」と見間違える奴は、2020年の日本には、いない。
それに俺には隙が無い。
小柄にも関わらず、常に80㎏~90㎏の間に体重をキープ、70㎏など寄せつけない。
毎日、家と会社の往復だ。
他、定食屋と牛丼チェーンの往復だ。
さらわれる隙がないはずだ。
定食屋と牛丼チェーンの往復に驚いた君は、きっと女性だ。
男にはそんな夜も、ある。
解ってやれ。
それを理解できなければ、女なんてやめちまえ。
今回の自己紹介は、俺の近況で申し訳ない。さらわれ中。
もっと、好きな女性のタイプなど、そろそろ明かしてゆきたいというのに。
読者は皆、夢オチと予測してこのエッセイを読んでいるだろう。
それもまたよし。
どんどん減っている読者諸君!
その分、俺の腹もどんどん減る!
そしたら俺はカツ丼を食う!
なんと、読者と俺の腹は連動しているのだ・・・!驚いただろう?
つまり、いま、この文章を読んでいる諸君は、俺の腹なのだ。
素晴らしくも薄気味悪い体験を、すべての読者に、じゅて~~~む。
要約すると、俺が毎日カツ丼を食えるのは、読者諸君のおかげだよジュテーム!
毎日カツ丼を食っている事実に驚いたかもしれないが、驚かないで欲しい。一生のお願いとする。
・・・。
・・・。
・・・。
(なんの話をしてたのだ我々は)
・・・。
! ! ! ! ! !
俺はドラマで見たことがある。
「トイレに行きたい」
と懇願すると、犯人グループの一番の下っ端の心優しい奴が、縄をほどいてくれる場面を。
俺はトイレには行きたくない。
行ってたまるか。
俺は、
「カツ丼を食べたい」
「麻婆麺が食べたい」
「生姜焼き定食が食べたい」
「焼き肉食べ放題に行きたい」
と、懇願する。
しかも。
「すべて俺のおごりだ」
と提案する。
そして、俺は解放されるだろう。
犯人グループも、みんなでガッツリ食いたいのだ。
こうして、事件は解決だ。俺が誘拐された。俺が幽閉された。そして解放された。
解決済で申し訳ないが、想像して楽しんでもらおう。
もちろん、犯人グループは俺を持て余していたな。ジェネレーションギャップで。
近所に「宮村チキン達太」というキラキラネームの少年がいるとしか考えられない。
俺は、それと、間違えられて幽閉されたのだろう。
本当のハッピーエンドを見たことはあるか?
俺は、ある。
宮村チキン達太君も、俺も、無事というハッピーエンドだ。
エッセイだったな。中学の教科書に載るにふさわしい。
じゅて~む。
い
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