じゅて~む エッセイ編 第二十三夜
【あらすじ】
N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。
タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。
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まずは自己紹介から。
俺は達太。丼ものが大好きな会社員だ。
いや。丼ものが大好きな会社員だった。昨日までは・・・。
会社を辞めたと心配してくれ、ありがとう。だが安心して欲しい。辞めてない。丼ものも大好きなままだ。何一つ変わっていない。「昨日までは」は、そう書いただけだ。意味はない。罪の意識もない。
心配をかけてすまない。
今日、外国の映画をレンタルした。
そのせいだろう。
映画の中で主人公が、途中で退職したんだろう。そんなシーンまったく覚えちゃいないが。
ホップコーンでも口に放り込んだり、流し込んだりしながら食おうと、映画を再生。
しかし、ホップコーンなんて自宅にあるわけがない。
あるのは冷凍のナゲットだけだ。
業務用スーパーで買った。30個入とお利口な容量だ。
このナゲットを口に放り込んだり、串に刺してナゲット棒を作ったりして食おうと、映画を再生。
ケチャップも忘れずに。マスタードも忘れずに。コーラを忘れている。
コーラは脳内で湧かすか。
もちろん、そんな芸当初挑戦だ。
目からは外国の風景が、口からはナゲットが、入ってくる。映画もいいもんだ。
耳には映画音楽。腹には映画の感覚。頭にはストーリーが入るはずだったが入ってこない。
まあいい、そのうち入ってくる。
それまでは口にナゲットが入ることでヨシとする。
俺は、映画を楽しみながら、字幕を読むのが面倒になり、吹替に切り替えるのも面倒になり、英語のまま楽しむ。
理解はできていないと思う。
長い2時間だった。
30個のナゲットは30分でなくなるし、あとの1時間30分は、女の事を考えていた。
誕生日に何を贈ろう。
面倒だ。
商品券にしよう。あいつ、怒るかな。
俺なら商品券で何を買うか。
肉だ。
最も好きな肉にしよう。豚と牛。一部の鶏も、最も好きな肉だ。
女も商品券を肉に使うだろうか?
女って生き物は油断ならん。俺を裏切り、化粧品にでも使われた日には、俺のハートは薔薇よりも赤く、弱く、妖艶になってしまう。
おや?嫌じゃないな。むしろ良い。
決めた、女の誕生日に商品券を贈って、俺のハートを薔薇のごとく妖艶に成長させよう。
まだ映画をやっているな。
2時間も、すごいな。
とまあ、本日は映画浸けの一日だったわけだ。
エッセイが映画化されたケースはこれまであるのだろうか。
もしかしたら、今日の映画は、エッセイが原作かもしれないな。あり得る。平穏だった、ために飽きて字幕を読むのをやめた、ナゲット串を作ったり。
俺のエッセイの方が映画化に適していると思う。
だがクランクアップしてみろ。打ち上げが面倒だ。業界慣れしていないから俺は。
主演は誰だ。
俺に似ているのはバッハと布袋尊と紅の豚と、徳川家康か。
全員、実在しないな。UMAとまではいかないまでも未確認だ。
映画化は辞退。会社は行く。
映画化を 断りナゲット 肩に乗せ
映画化を断り、会社へ行き、ナゲットをこの分厚い肩に乗せてしまう状況が、ありありと浮かぶ句が詠めた。
急に詠めて、俺も驚いた。
俺はエッセイストじゃないのかもしれない。
自由人かもしれない。
ナゲットを肩に乗せ君 3歩も歩けず
2つの句に共通するのは、ナゲットを肩に乗せるところだ。
なぜ乗せた。聞くな。
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