じゅて~む 推理小説編 第二夜【豚】
【あらすじ】
39歳の会社員であり、エッセイストの達太は、高木ブー氏とほんじゃまか石塚さんのハーフのような出で立ち。つまり、立派なハーフ。
季節は夏。
達太が浜辺で、腹を出して寝転んでいたところ、見知らぬ少年のかき氷メロン味が、誰かに盗まれてしまう事件が発生。「僕のかき氷がないよ」と嘆く少年。
達太は素早く、会社員兼エッセイストから、探偵に転身。
犯人捜しに興じることに。
浜辺にいる人々に、口を開けてベロを見せて!と命じながら、浜辺を練り歩く達太。
しかし。浜辺にいる誰もが、達太の命令には従わず・・・。
達太は、なぜベロを見たいかは、まだ秘密にしたいらしく・・・。
二話完結の推理小説、「上下巻」ではなく、達太の好きな言葉「海豚」にのっとり、前回のテーマは「海」、今回のテーマは「豚」。
最終話「豚」、事件は解決なるか。
達太は「海豚」がイルカと分かるか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「みなさん、口を大きく開けて!
じゅて~む。」
俺は疲れてきた。
そのとき。
海の家のメニュウに豚串があったことを、俺は思い出した。
豚串を食いたいと思った。
捜査を諦めたかにみえるだろう。
しかし。逆だ。
俺は豚串を20本、注文する。
お時間20分ほど頂きますと海の家の女が冷たく俺をあしらう。
待とうじゃないかと俺は答える。
あくまでジェントルに。
待つ間、カツカレーも食おうじゃないかと俺は女に提案する。
女は豚串20本とカツカレーの料金を俺に請求してきた。
そうだな、俺らの財布は一緒ではない。夫婦ではない。払おうじゃないかと俺は、払う。
カツカレーは旨かった。暑い日のカレーは格別というが、トンカツも格別だ。
豚串20本も焼きあがった。
俺は豚串を両手に抱え、再び浜辺を練り歩く。
そして、
「一口どうぞ、美味しい豚串です。」
浜辺にいる人々に、接触をする。
「はい、あ~~ん!」
人は「あ~ん」としてくれるに違いない。豚串なら間違いない。これが焼き鳥だと、そうはいかない。
ししとう串だと、希望はゼロだ。
人が「あ~ん」したらしめたものだ。
ベロの色を確認、緑だったら、そいつが犯人。
しかし。
豚串は食わせない。
「はい、あ~~ん!」と言いながら、この短い腕をくるりとひる返し、自分の口元に豚串を持ってくる。
旨いな豚串。
俺は浜辺にいる人々に片っ端から
「一口どうぞ、美味しい豚串です。」
「はい、あ~~ん!」
と、しながら、どんどん豚串を平らげていく。
全員、キョトンだ。
キョトンとした後、海での遊びを再開する。
つまり、すべての豚串は俺の腹に収まる。最高だ、しかし探偵としては最悪の事態だ。俺には最高の事態だ。
豚串19本め。
俺は一人の少年に
「一口どうぞ、美味しい豚串です。」
「はい、あ~~ん!」
を実行。
もちろん少年はキョトン。俺は豚串を頂く。
そして、豚串をモグモグしながら、その少年の手に持つカップを見てしまったんだ。
そこには緑色の液体。
少年の顔を、豚串を食べ進めながら凝視したんだ。
それは、「僕のかき氷がないよ」と悲観していた少年だったんだ。
おいおい、勘弁してくれよ。
だからかき氷は嫌いなんだ。
水と化す。
腹に溜まらない。
最後の豚串を食う前に、事件は解決か。
だが。問題がひとつ残る。
最後の豚串を少年に与え、かき氷の無意味さと豚串の素晴らしさを少年に、いち大人として教えるべきか。
それとも自分で食すか。
じゅて~むか。
【完】
0コメント