じゅて~む エッセイ編 第27夜
【あらすじ】
N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子(39歳)が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。
タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。
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まずは自己紹介から。
俺は達太。会社員、39歳。
血液型は、おそらくO型。
調べたことはないが、わかる。
俺は高木ブー氏と、ほんじゃまか石塚さんをミックスしたような出で立ちだからだ。
つまり、俺は2人の間に産み落とされたハーフのガキだ。
2人とも血液型はO型だ。
だから俺もO型。
俺の実の両親はA型だから、親がピンチのときに俺が輸血できないことが申し訳ない。
両親の健康を祈る。
父さん母さんじゅて~む。
両親には迷惑ばかりかけたな。
とにかくよく食べた。
そのくせ、腹を出して寝て、風邪をひいたりした。
俺は昔っから、自分の腹が大好きだ。他人とは思えない。
だから、腹を服から出してあげないと可哀そうだと考えたのだ。そうしないと腹がどっかへ行ってしまうんじゃないか、と心配だったんだ。
雷が鳴る。
俺は率先して腹を出す子供だった。
ヘソなど持ってゆけ!
腹さえあれば良し。
母はそんな俺を、男児として頼もしく思っていたに違いない。
俺が小さい頃はまだ祖父が生きていて、だが痴呆が始まり、夕飯を食べたそばから「夕飯はまだかね」など言うようになった。
俺は祖父に加勢した。
「俺もまだ晩御飯を食べてない気がする。おじいちゃんが正しい。お母さんはもう一回晩御飯を作るべきだよ!」
うまくいくと、2回晩御飯を食べることができた。
母には悪いことをした。
今でも帰省すると、駅で天丼を食ったにも関わらず、
「お昼はまだ?」
と問われると
「乗り換えが大変だったからね、それに早く家に来たかったからさ。」
などとあやふやに答えて、二度目の昼飯にあやかる。
これも親孝行のうち。手料理をあと何度食えるか。腹にも俺にも母にも、わからない。
反抗期などには、両親を無視し、俺一人で生きてますという態度をとり、じゃあなぜ食卓に3人前も晩御飯があるんですか?とつっかかり、両親の分の晩飯まで食べた。
やめろ食い過ぎだ、という父の言葉を無視し・・・。
そのくせ、食べるものが無くなってしまった両親が、怒りながら近所の定食屋に行くと、しっかり俺もついて行って、そこでもしっかり食べた。
心の底では両親に申し訳ないと思っていたが、決まりが悪くて大盛を頼み、生意気をきどった。
まったく、子供だった。
今では立派なエッセイストの俺にも、わかりやすい反抗期があったというわけだ。
その当時の俺の「将来の夢」は、一貫して「くノ一」だった。
今にして思えば、無茶な夢だった。
20世紀に忍者?
しかも女の?
男のこの俺が?
では、どう目指す。
学校はどうする、女子高か。馴染めるか。
忍者を目指す女どもだ、宝塚音楽学校よりも男に厳しそうだ。
男とバレたときには、至近距離で吹き矢を吹かれるだろう。
この夢を打ち砕いてくれたのが、礼子先生だ。俺の初恋の人。
あるとき、クラスで七夕をやろうとなり、俺が短冊に「くノ一にして下さい」と書いているのを見つけた女教師が、こっそり俺に教えてくれた。
「宮村君。くノ一は女の忍者のことよ。」
俺は耳まで真っ赤になった。
俺はムチムチしていたから、女教師にとっては、とても可愛らしい存在だったと思う。
中学生の頃~29歳くらいまでは、音楽家のバッハにそっくりだったのだ。
「礼子先生ありがとう。俺、くノ一の夢は諦めるよ。
その代わり、大人になったら先生のお婿さんになるよ。」
女教師は、俺の将来の夢が「お婿」という男であったことに安心していたな。
しかし、それにしても。七夕は素晴らしい。
織姫と彦星が年に一度会える日。
俺たちが短冊に願いを書けば、それも叶えてくれる。
なんていい人達なんだ。
大人になった今、くノ一である自分を想像する。
もちろん、この外見のまんまだ。違うのは男ではなく、女という点だけ。
迫力のある女だ。
美しいとは言えない。
しかし、くノ一には違いない。
くノ一達太は蝶のように舞い、くノ一達太は蜂のように刺す。
くノ一達太は女豹。数々の男を誘惑。
ご飯を奢らせる。
ところが、女は外見重視という強敵も出現。
そこは機転の利く、くノ一達太。
美女に変化。
そういうこともできるのだ。最初からそうしない、くノ一達太のいじらしさ。
美女となった俺は、政治家の蓮舫にそっくりだ。
政治的メッセージなど無い。どうせ美女に化けるなら、一番好みの女に化けるんだ。
しかも想像しやすいはずだ。蓮舫はヘアスタイル的に、頭巾をかぶっていても、いなくても、印象が変わらない。一緒だ。
美しく化けた俺は、将軍の首を狙う。
20年後の俺にそっくりな、徳川家康を、俺は殺めなければならないのか。
最悪だ。
あのとき。くノ一になる夢を諦めておいて良かった。
エッセイストになれたのだ。
今回は感動エッセイだったな。
嫁に行く前日に書いたようなエッセイになったな。
また誰かに止めてもらう必要があるな。嫁には行けないと。
さあ、止めたまえよ。
じゅて~む
」
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