じゅて~む エッセイ編 第31夜
【あらすじ】
N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子(39歳)が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。
タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。
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こんばんは。
夢で逢いましょう。
挨拶はこのへんにして、まずは自己紹介から。
俺は達太。平凡な39歳の会社員だ。
外見はそうだな。
良く言えばジャムおじさん。
悪く言えばアンパンマン。
わかりやすく言うと、藤岡弘が40㎏の増量に挑んで、もちろん役作りなのだが、ドクターストップがかかってしまい、藤岡弘は降板。
監督は代役に高木ブーを希望したが、演技指導係が塚地(ドランクドラゴン)を希望してきて、関係者全員が悩んでいるところに、演技上手の俺が現れたら、大団円。
という外見だ。
はあ。
疲れた。
「わかりやすく言うと」というフリで、長々語るという、お笑いをやってみたのだが、どうも俺にお笑いは向かない。
長々しいだけで、大変わかりやすい例えとなってしまった。
エッセイストだから仕方ないのだが。
はあ。疲れた。俺は疲れやすいのだ。スタミナ牛丼を食うか。
いや。
エッセイスタートだ。スタミナ牛丼は後回しだ。エッセイだ。
俺には双子の弟がいる。
正確には、いた。
名は達細。
たつほそと読ます。
達細はいつでも俺にべったりだった。俺のすることは何でも真似た。
元々一卵性なので、俺と達細はそっくりなのだが、聡明な子供だった俺の発明する遊びを真似てばかりいた達細は、俺と同じく丸々した可愛らしい奴になってしまった。
例えば俺は、おかわり5杯ゲームという、ご飯を5杯食べるだけの面白い遊びを編み出した。明解なルールがウケた。誰に。俺と達細にウケた。
なるべく寝転んで一日過ごす戦い、ただしシチューを飲むときだけ立って良い、という複雑な遊びも編み出した。
達細は喜んでシチューを飲んだ。俺は寝転んでカレーパンを食べた。
お誕生日会の招待状には
『ドレスコードは片手にメンチカツを乗せてくる☆です。待ってます。達太&達細』
としたためた。
招待したクラスの男子13人中、当日は2人しかメンチカツを手に乗せてこなかった。
当時の俺は、
「こいつら。俺の家に来るまでに我慢ならずに食べてしまったのだな。友情に薄い奴らめ。しかし子供のしたこと、許すか。」
今思えば、俺こそが子供だった。今ならわかる。皆、親に止められたり、冗談と勘違いしたのだろう。
メンチを手にのせてきた2人とは、今でも年賀状のやり取りがある。
さて達細だ。
俺と達細は瓜二つ。
達細は当然、周囲から馬鹿にされるようになる。
達太の俺は、丸々して可愛らしい、そうだ、それでこそ達太。
しかし達細。名に「細」という最悪の一文字がある。俺は両親を恨む。なぜ俺ばっかり得をして達細ばかりが損を。
俺は達細を馬鹿にする奴らを片っ端から校舎裏に呼び出し、そいつらを心の中で揚げ物にして食べることで、何とか達細を周囲から守ってやった。
達細もそんな俺を心から尊敬しているようだった。
しかし別れは突然やってきた。
それは俺と達細が19歳のとき。
俺も達細も、音楽家バッハにそっくりだった19歳の春。
達細は子犬のように親戚の家にもらわれて行った。
俺は右腕を失った気分になった。腹の右上に腕が無い。腹はある。じゃあ問題ないではないか。何が不満だ?
なんとも表現しがたい状態だ。
ぽっかり、腹に穴が開いたような。その腹を埋めるため、人の3倍のカレーライスを食べなければならない。
淋しいの一言に尽きる。
長々述べたが一言で落とす。
「淋しい」
こんなときにお笑いがさく裂だ。皮肉なもんだ。
当時の俺は、達細との別れの原因が自分にあると思い込んでいた。
俺にかかる食費が家計を圧迫。
弟である達細を他所へやるしか、宮村家を守るすべは無かったのだ。
しかし実際は違うようだ。
今ならわかる。
進学だ。
山形の大学に通うべく、達細は山形の親戚の家に居候をさせてもらったのだろう。
山形の親戚は、達細にかかる食費で家計を圧迫されたのだろう。
みるみる貧乏くさくなっていった。
達細は食うに困ってないか。
名のごとく細ってしまい竹野内豊のようになってしまっては、いないか。
兄として大変心配だ。
先日。
俺は思い切って両親に、達細は元気なのかと尋ねてみた。
竹野内豊みたくなっていないか心配だと。
したところ。両親は達細の存在を知らないではないか。
・・・・はて。
嘘つきは両親か。
それとも俺か。
夢オチか。
夢オチと並ぶ「草オチ」をご存じか。虫かと思ったら草だったという、恐ろしくつまらなく、しかし誰の心にも突き刺さるオチ。
達細。
正直に言おう。
俺の願望をエッセイにしてみた。
俺にそっくりの双子の弟、達細。
流れ星が流れたなら、俺はこの長いエッセイを、3回唱えようじゃないか。
そのときが、本当の達細の誕生だ。
俺と双子なのに、これから誕生する達細に、
じゅて~む
明日は我が身、それが竹野内豊。
りありぃ~?
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