じゅて~む 旅エッセイ秋田編 第39夜












【あらすじ】


N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子(39歳)が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。


タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。


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こんばんは。


まずは自己紹介から。




俺は達太。39歳の会社員だ。


見てくれは悪くはない。


女優の長谷川京子が50㎏近くの増量に成功し、髪にアイロンパーマをあて、どんよりと何処を見ているかわからない目つきとなり、口角をだらしなく落とし、胴長短足になったような、ハセキョーだ。


肌は奇麗なままなのだが、肝臓が悪いような色だ。妖艶な薔薇のような。


また、当然、二重ではなくなっている。


それが俺。




だから、秋田に俺の像があると聞いても驚かない。




田沢湖の湖畔にある「たつ子像」だ。


他人の口から「たつ子像」「たつ子像」と聞いたときには、驚いた。




18行前に驚かないと記したが、最初は驚いたのだ。


いや、もっと近い行だったか。


しかし数えて確かめることはしない。


それはこのエッセイが書籍化されたとき、とてつもなく大きい本になり、


(それはデカいテレビくらいの本だ・・・)


1行が長々しくなる可能性が、大だからだ。


もちろん、注文ミスだ。


本屋では目立つどころか、大きすぎて置いてもらえないだろう。完全受注生産となる。


図書館の新潟県ゆかりの作家エリアでは、貸し出し不可扱いだ。


俺のファンは、しぶしぶアルビの歴史本か、バイパスと田中角栄がよくわかる本を借りて、ひとつ頭が良くなるだろう。おめでとう。


とてつもなくデカい本に乾杯。


だから、何行前など考えても無駄なのだ。色んな可能性が大なのだ。


俺はたつ子像に驚かないし、最初驚いたし、書籍化に成功するも書籍化に失敗する。なんにも矛盾してはいないのだ。




だが、しかし不可解。


なぜ、秋田に、俺の像が?


しかも、俺を女にした像。


俺を女にする意味は・・・。


新潟生まれ、新潟育ち、新潟在住の俺を、なぜ秋田が讃えてくれるのだ?



俺は秋田に何かしてあげたか?


いいや。秋田にしてあげられることは何一つない。


きりたんぽ。


ハタハタ。


稲庭うどん。


しょっつる。


どう考えても、俺は秋田に愛されることはない。


秋田はなぜそんな俺を愛してくれたのか。


地鶏。


弱い。


何一つ食いたくない。


いや、食ってもいい。だが、30分後に国道沿いの牛丼チェーンやカツ丼チェーンに入店する必要がある。二度手間だ。


二度で足りなければ三度手間も惜しまないが。


つまり。そういった事ならば、何度手間でも、手間を重ねよう、


入店だ。合掌だ。合掌だ。入店だ。




いぶりがっこ。


忘れていた。


だが他店に入店だ、合掌だ。


考えていても進歩はない。堂々めぐりだ。


きりたんぽ、ハタハタ、稲庭うどん、しょっつる。気が重い。




季節は11月。


3連休。


俺は秋田に行くことに。



1行前「今月は11月」と言いたかったんだが、季節は11月と言ってしまった。


だが気に入った。


例えば5月。新緑の素晴らしい季節だが、春だか夏だか意味不明だ。


意味不明のため、素晴らしい季節なのに嫌いになってしまいそうだ。


みんなそうだろう。みんなそれで困っていたんだろう。


だがもう泣いてくれるな。


「季節は5月」


春?夏?と悩まず、季節は5月。


目の前に新緑が広がる。




他にもある。


それは3月。


冬だか春だか意味不明。


年末だか年度末だか、グレー。


実際は年度末なのだが、季節が意味不明なため、全国民が混乱している。


そう漏れ聞く。デマ?


だが、もう大丈夫。


「季節は3月」


確かに!となる。清々しい気持ちで一年生は二年生に。二年生は三年生になれる。


ご入学おめでとうございます。




達太の野郎め、今日はやけにおしゃべりだな・・・昼間っから酒でも飲んでいるな・・・。


そう思われても仕方ない。


今日の俺はおしゃべりかもしれない。東北の男にしては。


ほらまた。東北の男でもないくせに、すぐそういう事を言う。おしゃべりだな。




しかし逆だ。


昼間っから酒の逆だ。


俺は国道7号を徐々に北上している。


一人旅で暇なのだ。


それでおしゃべりなのだ。


しかも定食屋を見つけるたびに入店しているので、全然進まない、秋田が見えてこない。


15時~17時半の食堂が閉まっている時間帯にどれだけ進めるかにかかっている。


そして15時~17時半の間に、国道7号沿いにチェーン店があり開店してしまっており入店してしまうか?にも、かかっている。


俺とたつ子、巡り会えるのか。


やはり、たつ子像はみっともないのだろうか。


俺そっくりの女、たつ子像は観光客に笑われてないだろうか。


子供らに石など投げられてないだろうか。


女子旅ご一行に、引き立て役として記念撮影され、インスタにアップされていないだろうか。


たつ子像の脇に立てば、誰もが美人。小顔。8頭身。




心配でたまらないが、牛歩で秋田へ。



このまま秋田が見えてこなければ、適当なところで左折し、海の方角へ行くか。そして桜井和寿の別荘に泊めてもらうとするか。


今わかったことがある。


国道7号を北上し、秋田や青森を目指す途中で左折をすることは、挫折に値する。


左折は挫折。


ダジャレの誕生だ。


例え一夜のミスチル体験ができても、それはダジャレでしかない。



では引き返すか。


俺はエッセイスト。


ネタ書きではないし、万一にもネタ書きであってもダジャレ行為は避ける。



だが、たつ子には会いたい。俺の女。




たれカツ、カレー味半身揚げ。


きりたんぽ、ハタハタ。


たれカツW。


ハタW。


秋田


引き返すか。


悪い子はいねえ。




じゅて~む




【予告】


横手やきそばの存在を知り、達太の心に火が灯る・・・。




どうか




じゅて~む

【あらすじ】 N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、 架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。 そして、達太の外見は、39歳にして徳川家康公にそっくりであった・・・。

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