じゅて~む 旅エッセイ秋田編 第41夜
【あらすじ】
N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子(39歳)が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。
タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。
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まずは俺の自己紹介から。
当たり前だ。
他人の自己紹介など俺にはできない。
通常の紹介ならしてやれる。
死んでなお俺はエッセイストだ。文章力には自信がある。
それに死んでもいない。生きている。その証拠に腹が空く。
俺に紹介して欲しい方は、yama_modern@yahoo.co.jpに、連絡してみて欲しい。
過去には、ざっくりした経歴を頂戴し、壮大な伝記に昇華させて友人にプレゼントしたこともある。
伝記を盛り上げるために、途中貴方を骨折させるかもしれない。
だが安心して欲しい。骨はいずれくっつく。
それでもあなた方が、俺に伝記を依頼することに不安を覚えるようならば、骨折のリハビリに励む貴方の姿に惚れる異性が続出する演出も、加えようじゃないか。
俺はエッセイストだ。安心してくれたまえ。骨折させるとも限らないし。
金はいらない。俺は会社員だ。金は会社から貰う。
それでもあなた方が、壮大な伝記のお礼に金を支払いたいというなら、俺の会社の社長になることだ。
あなた方にそれができるかな?
俺の会社は完全なる親族経営・・・。
そんな俺にも、たったひとつ心配事がある。
秋田は田沢湖の湖畔に、俺にそっくりの「達子像」という黄金に輝く裸婦像があるというのだ。
最初は俺も信じられなかったが、俺は長谷川京子に似ているから、客観的にみると美しいのかもしれない。
長谷川京子が50㎏の増量に成功し、オーバーオールを着こなし、高木ブーと唇を好感し、ブルドックのような目つきになったら、本当に俺だか長谷川京子だか判別がつかないと思われる。
俺は様々な定食屋に入店し、サインをしたり握手をしたり、二人前を注文し気持ちよく美味しそうに頂く。
長谷川京子の好感度は、うなぎのぼりだ。
「完全なるプライベートです。」とほほ笑む俺。
ところで何故だ。うな重が食べたい。
うなぎのぼりなど述べたからか。くだらない。そんなわけあるか。うな重が食べたい答えにはならない。
しかも、悲しい事に、今日俺はうな重にありつけない。
ハタハタ。
きりたんぽ。
体が重い。
本当の本当に体が重たい。
達子を救うために秋田に行けねばならないのだ。
現在、11月の3連休の3日目。
日帰りとなる。
秋田に日帰りなんて無理と思われるだろう?
ところが、だ。
昨日俺はそれをやってのけている。
一昨日はそれをやってのけて、ない。
※前夜と、前々夜を参照。
しかし、危険だ。
明日は会社。
万一にも秋田駅前に秋田犬がうじゃうじゃいて、そのうちの1匹になつかれてしまい、その子が俺の腹の上で昼寝を始めてしまったとしよう。
そうした場合、心優しい俺は、身動きがとれなくなる。
しかも秋田犬は大きいと聞く。
俺は重みはあるが、165㎝と巨漢にしては小柄。
秋田犬は俺の腹の上で昼寝しているつもりか知らんが、俺の体全体を覆う形に。
そんな重労働、腹が減るに違いない。それはいい、出前をとれば良いだけのこと。
だが、いなほは俺を待ってはくれないだろう。
いなほ内で「宮村達太様の乗り込みが確認できておりません。お急ぎのところ誠に申し訳ありませんが、もうしばらくお待ちください秋田犬が目覚めるまで。」とのアナウンスが流れるとは考えづらい。
弱ったな。一休のように指に唾をつけ、こめかみをさするわけにもいかないし。
俺は大人だ。一休は子供だから汚い行為も許されるのだ。
試しに俺は、唾をつけずに、こめかみをさすってみた。
驚いた事にすぐに閃いた。
俺は船に乗ることに。
船は乗り物の中で一番安全とされる。
一番と銘打つからには、時間的にもどうせ安全なんだろう。
そんなもんだろう。
考えるのが面倒だから、そう捉えよう。
しかも、もってこいの一番安全な船がある。
新潟港を出発し、秋田港へ寄り、小樽へ向かう日本海フェリー。
どうしてもハタハタが俺の体を重くするなら、船上で出逢った女にそそのかされて北海道まで行ってしまえばいい。
そうすれば女とジンギスカンを楽しんだり、「ザンギって何?」と盛り上がり、ザンギとは北海道の唐揚げなのだが、唐揚げとの違いを知るために唐揚げを食べ、ザンギを食べ、再び唐揚げを食べ、再びザンギに戻り、イチャイチャするのもいいだろう。
旅先だ。普段はスマートに女と過ごしたい俺だが、はしゃいであげよう。
あなた方もそうした方がいい。
女は、ジンギスカンと唐揚げとザンギを繰り返しご馳走になり、ご馳走になりすぎだと申し訳ながるだろう。
俺は女に、「すべて奢りだ。本当に金はいらない。金は会社から貰うことにしている。でもどうしてもと言うなら、札幌ラーメンを奢ってくれるかい?」と告げる。
女の顔に「食後のコーヒーではなく?!」という困惑を認める俺。
たまには恋愛ゲームもいいもんだ。
船はそういった意味でも安全か。
だが、船上で出逢う女が秋田美人だった場合、危険だ。
俺にきりたんぽを勧めてくるだろう。俺は美人に弱い。きりたんぽが夕食になってしまう。危険極まりない。
安全な船の上で、皮肉なもんだ。
その危険を回避するためには、どうしよう。俺は考える。
そして俺は元凶である日本海フェリーに入船してはならないと気付く。
あらかじめフェリー港を間違え、佐渡汽船に乗るのが安全か。
あのフェリー港の並びは、間違えるにもってこいだ。
佐渡汽船であれば、船上で女と出逢う心配もないだろう。
何度か乗ったことがあるが、そういった雰囲気ではなかった。
佐渡金山。
佐渡バター。
少々体が重いが、佐渡も新潟の一部。血まなこで探せば、たれカツ丼くらいあるだろう。
なんせ蔦屋があるくらいだ。
俺は連休最終日、佐渡を目指すことに。
待っていてくれ、達子。
血まなこでたれカツ丼を探す準備は万端だ。一番安全な乗り物、船で行こうじゃないか。
ちなみに一番危険な乗り物は一輪車か。
秋田に、じゅて~む
最高の連休をありがとう
【予告】
達太も年を重ね、60歳になり徳川家康公にそっくりになる頃、ハタハタの旨味がわかるようになり・・・。
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