じゅて~む エッセイ編 第59夜













【あらすじ】


N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子(39歳)が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。


タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。


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こんばんは。


俺は達太。


似ている有名人は高木ブーと、ほんじゃまかの石塚氏。


39歳。


会社員。昼にカツカレーや焼き肉丼などの出前をとることを、一日のピークとしている。




好きな花は、薔薇。


好きなブランドは、すき家。


他、吉野家。




好きなアーティストはゼロ。



最近俺は、エッセイストとして童話をよく勉強している。




どうやら童話は、俺の入り込む余地のある童話と、俺の入り込む余地のない童話に大別されるようだ。




赤ずきんちゃんでは俺は大活躍した。


※第54~56夜参照




しかし。


白雪姫では物語をどん底へと追いやってしまった。


※第58夜参照



俺は、無駄に童話の世界を荒らしたくは無い。


だから確実に入り込む余地のある物語を探すことにした。


白雪姫のようなバッドエンドは懲り懲りだ。




俺は、欧米を救うことを諦めた。


もっと地域密着でいくんだ。




俺は浦島太郎を救う。




まずは、亀を助ける。


それは止めない。


子供が亀をいじめることは良くない。


浦島が子供を諭す脇に、俺は浦島の親友として佇む。


ちなみに俺たちは19歳の青年だ。




「亀をいじめないでやっておくれ。」




「太郎の言うとおりだ。


 いじめ、カッコ悪い。


 生姜焼き、カッコいい。」




子供らは、きょとんとする。


俺はチャンスとばかりにたたみ掛ける。


「天丼カッコいい。焼き肉カッコいい。君たちなんて、コロッケすらカッコいいだろう?」




子供たちは、腹が減る。


家へと帰る。




亀がお礼を言いだす。


竜宮城へ連れて行くという。


は?城?


店ではなくて、城?


何故?



俺は正直に亀に聞く。




「お礼がしたいのに城に案内するのかい?お城は、お城好きの人しか喜ばないんだよ?


それに時々、お城と言いながら、城跡という、ただの広場とお堀の名残のような施設もある。


竜宮城は、本当はただの城跡じゃないだろうねえ。」




俺は断ろうとする。




「さあ、太郎。


 帰宅だ。


 君は浦島家へ。


 俺は宮村家へ。晩御飯を食いに帰るんだ。しし鍋かもしれない今夜は。」




しかし太郎は亀の誘いに乗ってしまうだろう。


俺は知っている。


実は太郎は、俺に隠してはいるが城が好きなようだ。




仕方ない。


竜宮城へ。知らないぞ太郎。お前の想像する城とは違うぞ、竜宮城は・・・。


城跡のほうがまだマシというもの。


竜宮城での1分は地上での1年。




竜宮城では宴が催された。


魚や美女による舞いも披露された。


ご馳走も並んだ。


旨い酒も。


だが、大変物足りない。


太郎はいたく楽しそうだ。舞いを観て拍手などしている。


馬鹿な。


こんな舞いに歓声や拍手を送るとは。


城好きもここまでくると、ただの物好きだ。


鉄板に乗ったハンバーグが運ばれてきたときのような歓声をあげるなよ。


鉄板にのったハンバーグにその拍手はとっておけよ。



「なあ、太郎、帰ろう。」




俺は何度も繰り返す。


1分に1回。太郎に帰りたいと告ぐ。



「なあ太郎、帰ろう。」


「太郎、聞いてる? 帰ろう?」


「太郎、帰らない?」


「縁も竹縄。よおぉ~お!はい。」


「一本締めをするんだよ太郎。」


「なあ太郎、帰ろう。」


「なあ太郎。料理は絶え間なく運ばれてくるが、すべて前菜みたいと思わないか?」


「このまま居ても魚料理しか出てこないはずだ。諦めて帰ろう。」


「帰ろう。」


「帰りたい。」


「帰りの亀を呼んでくれ。」


「うな重を持たせてくれ。」


「その箱の中身はうな重で頼む。」




めでたしだ。


俺と太郎は、20分しか竜宮城に滞在しない。


19歳だった俺たちは、地上に戻ると39歳。


最高の年齢だ。


まともに働いて入れば自由な金もあり、定食屋にばんばん通える。


大盛無料やおかわり自由の定食屋の情報も蓄積されている。


それが39歳。


イイ女の見分けもつく。


親孝行の大切さもわかっている。




「さあ、太郎、39歳になるぞ!


 玉手箱を開けよう。」




城好きの、乙姫にちょい惚れの、太郎はしぶしぶ、玉手箱を開けるだろう。


親友の俺を、少々恨めしく思いながら。




しかし。


箱を開けると、そこにはうな重。


年老いてしまう煙は不発。




「達太。お前って奴は、達太!」




めでたしだ。


サプライズ大成功。




じゅて~む、親友の太郎。




じゅて~む

【あらすじ】 N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、 架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。 そして、達太の外見は、39歳にして徳川家康公にそっくりであった・・・。

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