じゅてむりん② 第64夜
【あらすじ】
N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。
タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。
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俺は達太。
日本人だ。39歳だ。
高木ブーに似ている。
エッセイストだ。
「じゅて~む」と最後に囁いて〆るエッセイを、土日に発表している。
だが。
唐突に「じゅてむりん」で〆たくなってしまった。
じゅてむりん、で〆るには、やはり映画グレムリンに寄せていく必要がある。
だから俺は、クリスマスイヴに少年ビリーへのプレゼントとして、ビリーの元に現れた。
3つの、クリアできそうな約束と共に・・・。
①達太を太陽に晒してはいけない。
死んでしまうため。
②達太に水をかけてはいけない。
5体に増えるため。
③達太は深夜0時以降は食べない。
癖になるから?
そうではない。
緑色の化け物になってしまうからだ。
①~③を守ることなど容易い。
俺は、一生ビリーとこの家で、楽しく過ごし続けるだろう。
そのうち、家庭教師の役割も果たすかもしれないね。
じゅてむりん後半、お楽しみに。
ハッピーエンドが待っています。
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「ねえギズモ。今日は僕と一緒に眠ろうね。」
「おいビリー、俺は達太だ。宮村達太だ。そのギズモっての、やめてくれないか。」
「わかったよ。ごめん。」
「わかってくれたならいいんだ。
さあ、クリスマスのご馳走を堪能しよう。アーメン。」
「なあ達太君。
息子のビリーへのプレゼントとして、君を選択したんだがね。適当にアーメンと言うのはいかがなものか。」
「すみません。お父上。もっともっとオードヴゥルに感謝して、今後は唱えます。」
「ねえ達太!
ご飯はもう済んだよね!
とってもたくさん食べたもんね!
向こうでおもちゃで遊ぼうよ!」
「ビリー。悪いね。まだだ。
まだ食べるよ。」
「達太君。
息子の頼みだ。
それに今日はクリスマスだ。
おもちゃで遊んでやってくれ。」
「ウイ。ミスター。
ですが、もう眠ります。」
「嘘だろおい、まだ夜の9時だ!」
「ウソでしょギズ、、達太!
僕より早く寝るの?」
「嘘ではありません。
深夜0時以降に食事をしないためにも、もう寝てしまうのが良いでしょう。」
「なるほど。一理あるな。」
「え~。僕もっと達太と遊びたいよ!」
「さんきゅ。でも我慢だビリー。
俺は、ずっといる。
君の初めてのデートにも緩衝材として同行するし、結婚式では最前列にいる。明日、遊ぼう。お休み。」
「かん、しょう、何??」
「父上。そういう事で俺はシャワーを浴びて、寝ます。バスタオルはどちらに?」
「おま!
失礼、ギズ、達太君。
君は水を浴びてはいけない。」
「おっと!そうでした、俺としたことが、増えるところでした!
こんな食う奴が5体になったら大変ですよね、HAHAHAHA、HA!」
「この近所にコストコはありますか。
あ、アメリカじゃ全てのスーパーがコストコ然としてますか、HAHAHA、HA!」
俺はベッドへ向かう。
今日は疲れた。
最後に放ったアメリカンジョークが不発なのも仕方が無い。
アメリカの家庭に、急にプレゼントとして贈り込まれたんだ。送り込まれたんだ。贈り込まれたのか。
しかも、①~③の奇妙な約束とともに。
俺は明日から①太陽に当たらない、を守るために日傘を差して出歩くことになる。
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深夜0時30分。
ぐっすり眠る俺の耳に、
「達太、達太!」
との声が。
ビリーか?
「おはようビリー。
なんの用だい。」
「達太、ビスケット、食べる?」
食べる訳がない。
③の約束が無くても、ビスケットなんて食べない。
俺は一度「おはようビリー」と返したにも関わらず、狸寝入りを決め込む。
ビリーを無視。
「達太。達太。サンドイッチは?」
「具は?」
「ハムとチーズ。」
俺は具を訪ねたが、狸寝入りだ。カツサンドでないなら無意味。
ビリーは2度にわたる狸寝入りで、心を弱くしたようだ。
俺のベッド脇から、去った。
メリークリスマス、ビリー。
俺は心の中で思う。
だが。
ビリーが中途半端に火を点けた。
俺はクリスマスのオードブゥルが恋しくなる。
せっかくアメリカの家庭にプレゼントとして贈り込まれたのだ。堪能しなければ。
俺はベッドから這い出て、キッチンへ。
おいおい深夜0時をとうに回っているぞ・・・?
と自嘲しながら。
ハッピーエンドを頼むよ、達太?!
緑色の化け物になったり、5体に増えたり、死んだり、しないでくれよな!
最終話へ、続く。
この回が後半だと冒頭で述べたが、
長くなってきたので、最終話へ、続く。
じゅてむりん
メリークリスマス
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