じゅてむりん① 第63夜
【あらすじ】
N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。
タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。
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俺は達太。
39歳の会社員。
俺に似ている有名人は、
高木ブーや音楽家のバッハ、ほんじゃまかの石ちゃんと、名わき役揃いだ。
俺は月~金は会社員。
土日はエッセイストとして働いている。
「じゅて~む」で〆るエッセイを書いている。
だが。
俺がもしもグレムリンだったとしたら、どうだろう。
つまり、ジュテムリンだ。
とにかく響きが抜群だ。ジュテムリン。
たまには「じゅて~む」なんて甘い文句は封印して、「ジュテムリン」と囁いて〆たいもんだよ?
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クリスマスの夜。
俺は、発明家に見染められる。
「息子へのプレゼントになってやってくれないか。
君はとっても珍しい。」と。
「愛くるしいではなく、珍しいでイイのかい。さすが発明家、発想が格別だ。日本人のみっともない体格の、腹に栄養を蓄えまくった俺でいいのかい。」
いいだろう。俺も暇をしていたところだ。今年のクリスマスは女とディナーという気分ではなかったものでね・・・。
いつだってクリスマスだって、俺は生姜焼きや麻婆麺が食べたいんだ。
女とワインで乾杯なんて、御免だ。
だから俺は、アメリカ人の家族のクリスマスに参加して、オードブゥルを食べることを選ぶ。
息子さんとやらのプレゼントになってやろうではないか。
「お父さん、なに、このプレゼント!
とても胴長短足で太っているよ!
唐揚げ棒を両手に持っているし、口には肉まんを咥えている!器用だね!」
器用、か。
確かに俺は器用かもしれないね。
「ビリー、この子はとっても珍しい生物なんだよ。
ただし、約束があるよ。
①太陽に晒してはいけないよ。
②水をかけてはいけないよ。
③深夜の12時以降に食物を与えて
はダメだよ。」
この旦那、何を言い出すんだ。
ジュテムリン本人の俺は、そんなこと初耳だ。
①番は、まあ、クリアーだ。
今年の夏は日傘を射すか。
俺が、日傘ねぇ。
恥ずかしいが仕方あるまい。
道行く人は思うだろう。日焼けを気にする前に、その死んだ目や、立派な腹を気にしようよ!!!! と。
言わせたい奴には、言わせておけばいい。
あれ、でも、そんな奴はどうせ暇なんだろうから、そいつには面白いことを言わせておけば、もっといい。世界が楽しい雰囲気になる。
そして約束の②番だ。
水をかける?
は?
俺に水をかける機会がありますか?
はい、ある。
よく喫茶店で、理不尽に女性をフッた男は、グラスの水をかけられている。
だから恋愛は面倒だ。
だが。
これで言い訳ができた。
「俺は水をぶっかけられると、増えるんだ。俺が増えたら、みんな困るだろう?食費がかかる。」
「増え方はそんなに派手じゃない。
5体の俺ができる。」
女もフレたし、
親子は、5体の俺が下宿する様子を想像し、絶対に水をかけないと誓っただろう。
俺が家庭内に5体いたら、誰だって嫌だ。この俺ですら・・・。
つまり。②番もクリアーだろう。
しかし。
③番。
無理だ。
夜の0時以降に、食べてはいけないなんて。
俺は凶暴化するだろう。
俺の皮膚は緑色となり、
なんだかヌラヌラする。
目は、元から死んでいるのに、もっと死ぬ。
あんまり他人に見せたことの無い歯は、尖るだろう。
口を閉じていれば違いはわからないかもしれないね。
「ねえ、パパ。この子の名前は『ギズモ』にするって決めたよ!」
「いや。ダメだ。
俺はギズモ改め、宮村達太だ。」
「え!
僕のペットなのに、もう名前があるの??」
「ある。達太だ。そして、深夜0時以降にも色々食べたい。だってクリスマスだろう?」
さあ、いよいよ〆の文句だ。
ジュテムリン。
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