じゅてむりん③ 第65夜












【あらすじ】


N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。


タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。


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映画グレムリンにならい、少年ビリーへのクリスマスプレゼントとして、アメリカの家庭にじゅてむりんとして送り込まれた俺。




俺は達太。高木ブウ似の日本人だ。


生姜焼き定食や、カツカレーやカツ丼が好きだ。焼き肉や牛丼も好きだ。


それなのに日本を離れて大丈夫か?




答えは、大丈夫だ。


ピザやフライドチキンがある。


ハンバーグやステーキもある。


なんとかやっていけるだろう。




しかし、3つの約束がやっかい。


俺は39歳にして高木ブウに似ているという、奇跡の人間なのに、そう、人間なのに、




①達太は太陽を浴びてはならない。


 太陽を浴びると、達太は死ぬ。


②達太に水をかけてはならない。 


 5体に増えて食費がかさむ。


 場所もとる。


③深夜0時以降に食べてはならない。     


 0時以降に食べると緑色になる。




こんな約束、人間がするもんじゃない。


だが大丈夫。ハッピーエンドが待っている。


♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡




俺は、ビリーの深夜0時半の誘惑には乗らなかった。


「達太、ビスケットをどうだい?」


ちゃんちゃらおかしい。


ビスケットなんて子供の食べるもの。




それにビリーはいつまで起きているんだ。夜中に俺を見に来たのか?


ギズモのように可愛いペットなら夜中にも様子を見たくなるだろうが、


夜中に俺を見に来るなんて、悪趣味だ。


大丈夫かビリーは。将来がとても心配だ。


パパに明朝チクるか。悪趣味だが大丈夫ですかお宅のお子さんビリーは。と。



俺は、ビリーの将来を思いやりながらベッドを這い出て、台所へ。




クリスマスオードブゥルの続きを食べたいと、フッと思い立ったのだ。


深夜0時はとうに回っているが、まあ、いいだろう。




だが、約束③に背きはしないか?


俺はいつだって冷静だ。



台所へ向かっていたが、俺は頭を冷やすために、シャワーを浴びることにした。


いつだって冷静だが、頭を冷やすこともデキるんだ俺は。




②の約束については、実は、むしろ破りたかったんだ逆に。




俺が5人になる。


しかも映画グレムリンによると、増殖した俺は、本体の俺と、何だか雰囲気が違うらしい。




それって、楽しみじゃないか?


ワクワクが止まらない。




食費?


場所をとる?




そんなこと気にならないくらい、魅惑的ではないか?




例えば俺の目は、死んだように輝きを失っているが、増殖した俺の一人は、キラキラの二重だ。




俺は幸いにも髪の毛がフサフサだが、増殖した俺の中には、バーコードはげの俺もいるかもしれない。




中には、増殖した俺の中には、女性の俺もいるかもしれない。


しかも金髪だ。


年は26歳だ。


だが、俺そのものだ。


可哀そうに。


だが、彼女はとてもモテる。


太陽を浴びると死ぬので日傘を差しており、モテる。




俺は、シャワーを浴びたくて仕方が無くなってしまった。


5体の俺に会いたくて仕方が無い。


妊婦さんの気持ちが、わずかに解る。


会いたくって仕方が無い。




それに、汚いだろう、体を洗わず眠るなんて。聖夜に、汚い。そんなの嫌だ。


シャワーを浴びるんだ。




俺は、パジャマを脱ぎながら、バスルームへ向かう。


アメリカの風呂場か。水圧が高そうだな、それもいいだろう・・・。


だが寒そうだ。




しかし。シャワーを浴びるなり5人になれば、暖かいかもしれないな。湯気の中、俺たち5人、温め合うなんて最高のクリスマスだ。


誰だ②を唱えた奴は、ナンセンスな約束だ・・・。


「約束は破るためにある」


スターリンの言葉だ。


では。②を作ったのはスターリンか。




暇な時期に作ったのか。スターリンが俺を気に留めていたとは意外だ。俺はなんせ平和主義者なんでね。戦争なんて嫌いだ。定食屋が無いと困る身だ。たらふく食えないなんて御免だ。なんかを貫くために誰かが腹減るなんて大嫌いだ。定食屋が繁盛している状態がいい。




スターリンの挑発に乗るか。


魅惑的な挑発。


俺が5人。




♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡




また今夜も、長くなってしまったので、ハッピーエンドは次回持ち越しと、しよう。


悪いね。




前半、後半、と当初は銘打っていたのに悪いね。


今回は、上・中・下、の『下』の回だったはず。つまり、じゅてむりん最終話のはず。


おかしい。


磁場が狂っているのかもしれない。


いや、それは無い。オカルト的に言い訳してみたが、違う。


エッセイに磁場など無い。


予定よりも長くなっているんだ「じゅてむりん」が・・・。


次回こそはハッピーエンドが待っている。


次回を「下」ではないなら何と呼んで愛そうか。




じゅてむりん。










じゅて~む

【あらすじ】 N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、 架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。 そして、達太の外見は、39歳にして徳川家康公にそっくりであった・・・。

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