じゅて~む エッセイ編 第69夜
【あらすじ】
N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子(39歳)が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。
タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。
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俺は達太。
ごくごく平凡な日本のサラリーマンだ。
外見も至って普通。
音楽家のバッハが音楽に嫌われ、目の生気を失い、だらしなく太ってしまったような感じだ。
同長短足だ。
スーツがキマらない。
ちょっと人と違う点は、土日はエッセイストであること。
平日は月~金まで、昼に出前をとることをピークとして、大人しく働いている。
だが。
学生時代はそうではなかった。
平日は会社員などではなかった。
誰しもがそうだと思う。
今日は、世間の受験シーズンムードに乗じて、学生のみんなにエッセイしたいと思う。
学生はつくづく大変だと思うよ。
出前が自由にとれないはずだろう。俺ですらそうだった!
だから焦らないで欲しい。
今、会社員ではないから出前をとれなくて、君たちはヤキモキしているかもしれない。
授業というものがあって、勝手に教室を抜け出して牛丼屋に行くのが許されないかもしれない。
昼休みに校門を出て、焼肉食べ放題180分に行くわけにもいかない。
何故なら昼休みは180分も無いから。
辛いだろう。
60分で切り上げて、教室に戻るのは。
だから君たちは昼休みに焼肉食べ放題には行けない。
矛盾しているんだ、何もかもが。
悲しい、寒い、辛い、時代だ。
だが、それが学生だ。
だから学生運動なんてものが起こったんじゃないかな。
詳しくはわからないけれど。
出前がいつでもとれれば、反抗心だって起きないわけだし、勉強だって身につくだろう。
もっと言うと、失恋することも、無い。
女の子にフラれても、すぐに出前を取る。それも生姜焼き定食や、味噌ラーメン大盛りや、焼肉丼だ。
女の子たちは、まだまだ未熟で、子供で、定食屋のおじさんやおばさんみたく、注文の品を作れない。
だってそうだろう?
クラスの女の子全員が、定食屋みたく全メニューを作れるか?
5~7分で、大盛りで。
無理だ。女の子は定食屋のおじさんではないんだ。
女の子に幻想を抱くなよ。
女の子はクッキーしか焼いてくれない。部活の応援しかしてくれない。
社会はそんな甘いもんじゃないんだ。
だから。
つまり。
フラれても失恋しないんだ。
麻婆丼とカツカレーとを食べて、十分リカバリーできるんだ。
で、なんだっけ。
とにかく。
『受験が先か、カツ丼が先か』
で、悩んで、立ち止まるのは、もったいない。
絶対的に『カツ丼が先』
なんだよ。
もっというと、『受験はだいぶ後』
なんだよ。
『夜食を食べたくて受験という制度ができてしまった』
かもしれないよ。
俺なんかはそう思うね。
でも、母さん連中は、新しくて逞しい君たちの想いには追いつくことができないんだ。
だから夜食の誕生を信じたくない。
いつまでも君たちに卵ぼーろやお子様せんべい、ハイハインを食べていて欲しいからだ。
だから、その延長で「うどん」なんてもの、夜食に出してくる。
だが君たちはそれを大きく、カロリー的にも塩分的にも、もちろん質量的には絶対的に、大きく大きく裏切る必要がある。
裏切れよ!
そうだ裏切りだ!
しっかり裏切って、うどんを食いきって期待に応え、それから自分の携帯電話で近所の定食屋からカツ丼や唐揚げ定食の出前をとれよ!
家族の驚く顔を、出前でとれよ!
夜食は、会社員みたく好き勝手に日中食べられない君たちへの、招待状なんだ。
つまり夜食は、会社員への招待状、イコール社会人への招待状だ!
自分で電話をかける招待状だ!
社会人への招待状を断る理由なんて、受験生の君たちに、あるかい?
あるかもしれないね。
よくはわからないけれど。
あとは。
受験を控えた君たちに真実というエールを。
受験に勝つにはカツ丼。
合格したいからカツ丼。
それは嘘偽りない。
だが。申し訳ないが、キットカットじゃダメなんだ。
「カツ」の二文字って、とんかつを表していない場合は、ゼロという意味を持つんだ。
しかも。カツ丼だって、縁起物としては弱いんだ。
メニューとしては強いけれど。
だってそうだろう?
だいたい、受験には受かるもの。
勝ってどうする?
志願高に勝って、どうしたい?
志願高が公立なら、勝っても、まあ、どうってことないだろう。
なんか勝ったと勘違いしてる奴が入学してくるぞ、で済む。
だが、私立だった場合?
君が勝ったら、その学校は潰れるということだろう。
社会的にはそうだ。
君が勝って、他者(他社)が負けるとき。それは相手がブっ潰れるときだ。
君が勝ったと喜んだとき。
君の受験した学校は、潰れてなくなる。
廃校を免れても、買収される。大手企業に買収される。
君は何がしたいんだ?
だが俺は、39歳のエッセイストとして全面的に君を応援する。
それが大人の役割だ。
とにかく見守る。
見守りまくる。
俺が、準備不足で不安なときに頼るまじないを、贈る言葉としたい。
カツ丼カツカレーカツ丼カツカレーカツ丼カツカレー・・・・
これを繰り返すんだ。
そして腹が減るなら、君は成功する。
俺みたく、成る。
胃もたれを起こすなら、俺みたく、成らない。
君は、どうなりたい?
俺に成ってみる?
今日は受験シーズンスペシャルだったね。ぴったりじゃないか。
たまたまだよ、本当の本当に、偶然なんだ。
久々に童話や映画から離れたら、現実の濃度が濃くなって、熱いエッセイになっちゃたんだ。
今夜は俺、達太の立場からエールを贈ったけれど、明日の夜には、教育ママと尾木ママのミックスされた視点から、君たちにエールを贈ると思う。
お楽しみに。
じゅて~む
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