じゅて~む エッセイ編 第71夜 「達太こぶとりじいさんと寝食を共に②」












【あらすじ】


N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。


タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。


-----------------------------------------------




俺は達太、39歳の会社員。


七福神の布袋尊に似ている。


信楽焼のたぬきにも似ている。




平日は職場で出前を頼み、麻婆麺や生姜焼き定食を頂き、カツカレーを頂き、夕方にはメンチカツをおやつとして頂き、夕飯もしっかり頂く、という規則正しい生活を送っている。




たまの日曜くらいは、昼近くまでカップ焼きそばユーフォーとバゴーンを食べ比べるなどして、不摂生に過ごさせてもらおう。


だがせっかくの日曜に、それではもったいない。


不摂生なりに日曜を満喫したいものだ。女性はそこのところのバランスが上手だ。パスタランチの後にパンケーキを食べるなどして、「太っちゃいそうだけど、たまにはいいよね!


たまにはスタイルを気にせず楽しまなくっちゃ!」


そうして月曜からまた輝く。


オン、オフのバランス。俺も見習いたいもんだ。



そういった理由で、俺は昔話の「こぶとりじいさん」に目を付けた。


貧乏な匂いが纏わりつく時代に、小太り。おそらく農民の老人が小太りとは。相当のご馳走を普段から食べているはずだ。


豚を、地主に秘密で豚を、大量に飼い慣らしているのかもしれない。


俺が娘なら、その家に嫁ごう。貧乏でも、幸せならばいいじゃないか。




考えていても始まらないので、俺はこぶとりじいさんと寝食を共にさせてもらうことに。




だが。


昼に、にぎり飯とたくあんをご馳走になり、「おや?貧乏だ。あ、そっか、晩に全てもってくるのだな。腹持ち的に晩は早めの16時か。昔話らしい時間帯の晩だ。」と納得し、こぶとりじいさんと一緒に野良仕事に出掛けたところ、鬼が6名、やってきた。




「翁、俺は晩は16時と言わず、15時でも大丈夫そうです。」




「はい?


 それより大変じゃ。


 向こうからやってくるのは鬼じゃ。達太さん木の陰に隠れるんじゃ。」




「では晩は15時で決定で。


 隠れるのも了解です。」




ところが、俺の腹が木の陰に収まりきらない。


鬼にすぐに見つかってしまった。




「おい、そこに人間がいるな。


 俺達はこれから宴会を開く。


 踊りを見せて楽しませてくれたら、助けてやろう。」




「助ける?」




俺は今、何も困っちゃいない。


救ってもらう必要などない。


つまり。俺の聞き間違えか。




「今、助けると言いましたか?」




俺は鬼に確認する。


こぶとりじいさんは俺の、Tシャツの裾をグイグイ引っ張り、「やめろ」の意を伝えてくる。


ああ、またか。だから仕事慣れしてない相手とはやりづらい。


「翁、わからない者同士で相談はご法度です。わかる人に確認。これができない奴が意外と多いんですが、ミスを防ぐためにも、わかる人に聞くこと。


さ、鬼。もう一度。助けると聞き間違えたのですが、本当は何て?」




「そうだよ。助けてやると言ってるんだ。さあ、踊れ、踊らないと、助けてやらないぞ。」




聞き間違えではなかったか。




では。


俺は何から助けてもらえばいいんだ。


せっかくだから困っている物事がないか、洗い出そう。




「達太さん。鬼は、ワシらを見逃してやろうと言ってるんじゃ。食ったりせずに、見逃してやるっと意味合いじゃ。」




こぶとりじいさんがグイグイと裾を引っ張り続けている。


だが俺は、昼が貧乏だったため、そして困りごとを考え中で、じいさんの言葉が全く耳に入ってこない。


だが、じいさんの発した言葉の一端は、入ってきた。


「食ったりせずに」




元はといえば。じいさんが、俺に昼に粗食をさせたのが悪いんじゃないか?


だから鬼がやってきた。


違うか?




俺は困りごとを洗い出した。



「鬼。お待たせしました。


 助けて下さい。


 俺は15時まで待てません。


 今から始まる宴会に混ぜて下さい。


 こちらの翁も空腹に耐えている。その証拠に俺の衣服の裾を、このように引っ張っている。何か主張があるのでしょう。おそらくそれは空腹。」




「何だと?


 踊ったら助けてやるんだぞ?」




「だから鬼。宴会に混ぜて下さい。」




「踊ります!


 鬼さん、ワシらは踊りますので助けて下さい!」




「翁は黙っていて。


 鬼。レジャーシートと重箱を。


 翁も、そんな踊りたいなら宴会が盛り上がった頃に。さあ鬼も翁も。重箱を。」




「せめて、さんを付けなさい!」




「はいはい、翁さん。」




「違う!鬼に!


 あ、今のは違うんです、とにかく踊ります!」




「鬼。このとおり、翁は空腹で様子がおかしい。助けて下さい。俺達お昼はにぎり飯とたくあんだけだったんです。このとおり、俺も翁も小太りにも関わらず・・・」




! ! !


! ?




俺は鬼に説明しながら、唖然とした。


じいさんは、普通だ!


小太りではない!




俺は、何をしているんだ。




見れば見るほど、じいさんは昔話でよく見るタイプ。


特徴といえば頬にこぶがあるくらいか。




俺は茫然と、小太りではない、もはや魅力の無くなってしまったじいさんを眺める。




「??どうしたんじゃ。


 ワシの顔に何か付いておるか?」




「コブが付いているぞ。大丈夫か2人とも。踊ったら食ったりしないし、なんならコブも取ってやろうという話なんだが、」




次回、


いよいよ待望の宴会が始まる・・・。




じゅて~む







じゅて~む

【あらすじ】 N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、 架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。 そして、達太の外見は、39歳にして徳川家康公にそっくりであった・・・。

0コメント

  • 1000 / 1000