じゅて~む エッセイ編 第84夜「イタリアンダイエット②」
【あらすじ】
N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。
そして、達太の外見は、39歳にして高木ブー氏にそっくりであった・・・。
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ボーノ!
俺は達太。
イタリアに滞在中だ。
なぜって、もちろんダイエットのためだ。
俺は恰幅が、抜群にいい。
腹など特に、最高に盛り上がっている。
俺は、俺に満足している。
だが。
イタリア女と恋に落ちるには、腹を育てることよりも、額を上げていくことが重要だ。
そこで、ダイエットだ。
額を上げるのはそれからだ。
ピザはペラペラ。
俺は自然と痩せ細るだろう。
貧相にならないよう、注意が必要かもしれない。
だが、この考えは間違いだった。
イタリアに来て7日が経った。
ピザは案外、腹に溜まるとわかった。
ピザには具が乗っており、その具にしっかりとした味が付いているため、おかずおかずしているのだ。
ペラペラのおかず。
俺はピザにご飯を合わせて食べる方法を選んだ。
白米をどう調達するか?
俺は、キャリーバックからサトウのご飯を取り出す。
みんなも知っているかもしれないが、チンすると炊きあがる便利な米だ。
2パックで一人前だ。
俺のキャリーバックの中で、一番場所をとっている。
減らした方がいい。
お土産が入るスペースを作るんだ。
俺は2パックのサトウのご飯を手に、レンジに向かう。
さて。
ここまで話を進めておいておきながら、告白しよう。
俺はホテルの部屋で、ピザをデリバリーして食べているわけではない。
せっかくのイタリア。
豚バラの形をした国。
もちろん、レストランでピザを注文。
厨房はどこだ?
俺はキャリーバックをガラガラ引きずりながら、レストラン内を練り歩く。
俺は、何日かの滞在で、レストランでのサトウのご飯のお願いの仕方を、完全にマスターした。
まず厨房に、顔を出す。
コック達は、たいてい、驚く。
俺は、ツーリストの陽気さを演出するために、顔だけ、どよんと見せるのだ。
グロいおもちゃか?と、顔の奇麗なイタリア人達は思うかもしれないね。
そして、よくよく見ると同じ人類じゃないか、とコック達が気付いたタイミングで、
「エクスキューズ、ミ。」
俺は、サトウのご飯を顔の真横に並べる。2パックなので頬の両脇に。
アジア人のキュートさを演出するためだ。
達太のぶりっこ?
言いたい奴には言わせておけばいい。
可愛いは正義だ。
コック達が、ざわついているのがわかる。
言葉を超えて、わかる。
俺はもう一度、
「エクスキューズ、ミ。」
言いながら、俺の自慢の腹を、見せる。
自ずと、俺の全身が登場する。
厨房の入り口をふさぎながら、俺は、片言のイタリア語で、
・持ち込みはオーケーか。
・電子レンジはあるか。
・ピザをおかずにしたい。
・チップは弾む。
「頼む。そうしないと、1枚まるまるピザを食べると、飽きてくるんだ。」
「今度、ピザの上に、唐揚げとハンバーグを乗せてみるのはどうだ?」
調子がいいときは、こんな本気ジョークも放つ。
俺は、何日かの滞在で、ホテル周辺のレストランで噂となった。
「達太?」
と聞かれ、厨房に一番近い席に案内されることもあった。
俺がピザを注文すると、ライスが出てくる場合もあった。
俺はチップを弾む。
だが、全然痩せ細らない。
俺は焦る。
腹を凹ませるのは後回しにして、額を上げ、イタリア美女のナンパを始めるか・・・。
夜、バスルーム。
俺は、額に生えている髪を、引きちぎろうとしていた・・・。
生え際を、後退させるんだ。
イタリアに行くことなんて、もう無いかもしれないから、思いっきり楽しまなくっちゃ!
成田で、新婚旅行と思しき男女の、女の方が言った言葉が、俺の頭の中でリフレインを巻き起こしていた・・・。
じゅて~む
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