じゅて~む エッセイ編 第94夜
【あらすじ】
N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。
そして、達太の外見は、40歳にして徳川家康公にそっくりであった・・・。
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俺は達太、40歳の会社員。
そこそこモテる。
好きな言葉は『弱肉強食』
肉の誘惑にめっぽう弱く、強く、これを食いたいと願う。
なんとも切ない。食いたいねえ。
「じゃ、食えば?」
いやいや、強く食いたいんだぜ?
「じゃ、食えば?」と言われ、「じゃ、食おうか」となり、目の前にカツ丼と牛丼と回鍋肉が、瞬時に現れるかよバカ。
強く食いたいって言ってるじゃないか。車走らせるも、冷蔵庫開けるも、注文すら、したくないんだよ俺らとしては。肉の誘惑にめっぽう弱い俺ら。
熱くなってしまったね、たかだか自己紹介。俺の好きな言葉について。
一方、好きな四文字熟語は『大盛無料』と、『信号無視』。
だが、そんな七福神・布袋尊似の俺、日曜はエッセイストと化す。
芋虫が、さなぎを介さず突然蝶々になるごとく。鮮やかに。
(さなぎ、すまん)
このエッセイがスタートした2020年などは俺は随筆めいており、土日ともに蝶々、イコル、エッセイストになっていた。
土曜に、芋虫からいきなり蝶々になり、一旦死んで、日曜に芋虫として産まれ蝶々になっていたのだろうか。
今となっては意味がわからない。
疲れそう。
こんなのはすべて言い訳だ。反省だ。
俺は最近、エッセイストになっていなかった。日曜が何回あったことか。
常に芋虫だった。
只今確認したら、ヴァレンタインデーの夜に、芋虫 → 蝶々 → 死体 となって以来だ。
ホワイトデーくらい書けば良かった。
後悔先に立たず。
こんな言葉は嫌いだ。誰だ、こんな「本当にそうだなあ」と思う言葉を作ったのは。
は? おい待て。
ホワイトデーは来年も、ある。
後悔しなくていい。来年、書く。
ありがとう。
言い訳は続く。
だが言い訳ばかりじゃ腹に悪い、このエッセイをデート代わりにしている読者もいるだろう。
何故なら日曜だから。
ウィンドウショッピングでもしながら、言い訳を続けようか。
俺、達太と練り歩こう。
気になるバックがあったら立ち止まるように。いいね。
俺は芝居に誘われていたんだ。
女殺し屋の役だ。
くノ一達太か、悪くない。妖艶なことだ。
くノ一達太は蝶のように舞い、蜂のように刺す。(前にも言ったね。)
腹が邪魔で、狭いところには潜めないが、腹に色々仕込んでおける。
手裏剣は危ないから腹には仕込まない。腹に突き刺さったら絶体絶命。2針は縫わんとだろう。
仕込むのは握り飯など、おやつの類だ。バナナもいいね。
おい、見ろ、あのラーメン屋、すごい行列だ。
(忘れるなよウィンドウショッピング中だ。)
「並ぶ?どうする?」
俺は、どっちでもいいよ?と余裕があり頼もしい。君が決めていいんだぜ、君の好きにしていいんだぜ、ここのラーメン食いに来たわけじゃないけど。
「それとも、あっちに見える牛丼チェーン店にしとく?」
「あすこの喫茶パーラーもいいね。あ、でもさっきとかぶるか。やっぱ牛丼にしておく?」
俺らは先ほどまで喫茶店でナポリタン&ハンバーグ目玉焼き付をやっつけていた。
そこへ行列のラーメン屋を目撃、並ぶか迷っている君の横顔と決めつけ、牛丼チャンス。
「あの角にある中華食堂でもいいしね。麻婆の腹にはいつでもできるよ?」
君が決めていいんだぜ?
並ぶか、他にするか。
「あすこに、うどん屋もあるね。俺がうどん、意外?
うどん屋には、揚げ物ヴァイキングがあるんだよ、知らない?」
ちくわ天や野菜天が、いっぱいある。軽くてひょいひょいイケる。唐揚げも下手すると用意されているだろう。
「あっちに見えるはファミレスだ。再びハンバーグも、いいね」
「たこ焼き屋もある、たこ焼き食べながらラーメン屋に並ぶもありだね」
「あれはなんだ、イタリアンか。デートみたいだな。冗談だよ拗ねるな。」
君の好きでいいんだぜ?
俺は双眼鏡を片手に店を必死で探す。
そうだ、一応ウィンドウショッピング中だ、飲食店がひしめき合ってるわけじゃない。俺はリュックから双眼鏡まで出して、遠くに見える飲食店までも逃さずチェック、君をエスコート。
そうだ、リュックだ、君が転んだらすぐさま抱き起せるように。
転ぶのを防ぐのは無理だよ?
腕が短いうえ、肩に肉がたくさん付いており、肩の可動域が最小だ。
ところが、くノ一達太の標的は、良い人と発覚。
(ついてこい、エッセイ発表せず芋虫状態だったことの言い訳だ。)
得意のお色気忍法で惑わせ、毒を塗った手裏剣を放つのは容易い事、しかし。
と、そこへ、他にも標的を狙う者が、登場。許さん!とくノ一達太は激怒。
殺し屋だというその男、殺し屋のくせに表情が異様に豊か。
レオンに教えてやりたい。殺し屋でも表情豊かで大丈夫と。
眉・口・目を元に戻らないくらい動かしても殺し屋なら瞬時に治せると。
そうすれば、よりスムーズに幼きナタリーポートマンと仲良くなれるよと。
その役作りで激怒の状態が続いており、日曜は蝶々になる?
は? 意味わかんねえ、
だいたい、くノ一達太は蝶のように舞い蜂のように刺すんだから、これ以上蝶になるのは無理。
そんな芝居も先日、あっという間に終わってしまった。
今日からは日曜はエッセイだ。
ウィンドウショッピングは続く。
ショーウィンドウに映る俺の立派な腹。
その腹から、足が、手が頭が、顔を出している。
腹のおかげで足がどこから始まっているか不鮮明でいい。
達太、足もしかして長い!?
と思えば思える。
「もう少し歩こう?」
君の好きでいいんだぜ?、で、
もう少し歩こう?
は?
よし、そうしよう。
そういう日だ今日は。
店に入らないという最悪の事態。俺のエッセイ内のウィンドウショッピングが最悪の事態に。
俺はショックで白目で歩く。前が見えない。
そして俺は看板にぶつかり、看板を吹っ飛ばしてしまった。君のせいだ。全部。
俺は渋々と目を開ける。
こんな世界見たくないのに。
せめて眼前に、菜の花畑と焼き肉パーティの景色が広がっていますように。
その俺の目の前にあったのは、自らが吹っ飛ばしたと思しき、小顔サロンの看板。
は? 小顔サロン?
ああ、ネコカフェみたいなもんか。
小顔の女がコーヒーやクリームソーダを給仕してくれる。少々いかがわしいのかもしれない。君とのウィンドウショッピング中には相応しくないサロンかもしれない。
は? サロン? カフェじゃなくてサロン? じゃ、サロンか。
小顔の女ばかりが集うサロン。
俺の好むホラン千秋とかか。
じゃあサロンでは、知的な会話が飛び交うだろう。
俺も知的な会話を好む。エッセイを書いてしまうほど論理や哲学や見解や、そしてくだらん文章が、脳内を米のように埋めている。丼ものの米みたく、びっしり。たっぷりだ。
俺はずっと、そういったサロンを探していたんだった。
知的な会話の弾む、俺の小顔サロン。
次回の第95夜は小顔サロンに入店する。知的な会話の嵐だ。頭を使わせ悪いね。体験レポートを期待しても無駄だ。
第93夜の北風と太陽がほったらかしだが、これは小説ではないエッセイだ、徒然なるまんまに自由にかっ飛ばすんだ。
じゅて~む
お詫び
一部、達太出演の公演をご覧の方にのみわかるサービス箇所がありました
お詫びのクイズ
一個だけ嘘の記述があります。
ヒント、2行目。
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