じゅて~む エッセイ編 第97夜「もしも俺が一寸法師だったら」
【あらすじ】
N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。
そして、達太の外見は、39歳にして徳川家康公にそっくりであった・・・。
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まずは自己紹介から。
俺は達太、39歳、会社員。
日曜のみエッセイスト。
やってみたい日本昔話は、一寸法師。
小さいヒーロー、一寸法師。
俺には無理、いや、可能。
俺が小さくなるのを早々に諦め、一寸法師を大きくすれば、可能。
要は。子供のいない老夫婦の元に生まれ、お椀の船で京都に行き、
鬼の腹の中に入り、内側から鬼をやっつければ、いいんだろう。
俺は生まれる。老夫婦の元に。
文献によると、3センチで生まれる。
出産が楽だろう3センチなら、う●ちより小さい。むしろ便秘だ。
高齢出産だが命を持っていかれる心配がない。
なんて優しい昔話なんだ。
だが、3センチから育たない。一寸法師は。悲劇だな。
だが大丈夫。俺は育ってしまう。達太なので。
貧乏臭のつきまとう日本昔話の世界だが、貧乏そっちのけで俺は食べる。
カツ丼を、こっそり夜中に食べる。カツレツが、揚げ物が、ニッポンに伝来前だが、構わない。食べる。
俺は知っている伝来前でも旨さをボリュームを。カツレツを、カツカレーを、伝来時期は無視するんだ。
老夫婦は戸惑う。
3センチだが、ムチムチしてきた。
おじさんのような風貌。
ジャムおじさんだとか、高木ブー氏だとか、が、ガチャガチャの景品になった状態。それが3センチの達太。
気持ち悪い虫よりも気持ち悪い3センチの人間。誕生。よく喋り、よく食べる。これが鬼に立ち向かうというわけだ。
ところで。一寸法師は小さい為、鬼の口にあっさり入り込み、腹の内側から、どうやら攻撃して勝利を収めたらしい。
ところがどうだ。
俺が鬼の口にあっさりと入り込むのは、無理だ。
鬼が、俺にすごく気付いてしまう。
ある程度俺は目立つので。
それでも俺は鬼に挑む。
鬼に食べてもらう。
じゃないと内側から攻撃できない。
真正面から、俺は鬼の口に頭を入れてみる。
鬼は「待って、なんで俺の口に頭突っ込んでくるの?」など、往生際が悪い。
3センチの縛りはもう忘れろ、カツ丼以外にも色々食った結果、もはや、鬼とだいたい同じ身長、大きさだ、頭を鬼に押し付けるなど容易い。
だが、まあ、そんな勝利のビジョンは忘れ、俺は、お椀ではなく、丼に乗り込み京を目指す。
どうせなら牛丼を食べ終え、そこに乗って京に行きたいから。
特盛の牛丼。
俺は特盛を平らげて京都へ。
ご飯粒ひとつない丼(どんぶり)に、
まるで湯舟に浸かるように、入る。
さあ京都、姫、鬼、待っていろ。
しかし。丼は沈む。
お椀は川に浮かぶ、だが、丼は沈むさ当然。俺が乗ってなくとも沈むんだろう、丼なんて、重いから。
よく分からなくなってきたな。
もう全員、花見に出掛けるんだ。
おにょん。
間違った、じゅて~む
おにょんはフランス語で玉ねぎだ、間違った。
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