じゅて~む エッセイ編 第61夜
【あらすじ】
N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子(39歳)が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。
タイトルの「じゅて~む」は愛しているという意味だが、架空の男性・達太が主人公の小説「じゅて~む」からの引用でもある。
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失敗した。
ああ、失敗した。
俺はこのエッセイが第50夜を迎えたら、盛大にお祝いをしてやらなば、と考えていたのだ。
しかし、とっくに終わっていた。
ちょうど年末だったのもあり、仕事納めの解放感もあり、ほら、俺は月~金曜は会社員だから。
とにかく、第50夜を盛大にお祝いしてやることを忘れていたのだ。
そこで俺は、第50夜のお祝いを諦め、第60夜をお祝いしてやろうと思いついたのだ。
延期だ。
しかし、先週末に第60夜は終わってしまった。
中途半端な数字60にまで見放されてしまった。
俺は虚しさに襲われ、一人、旅に出ることにした。
女を誘おうか。
だが、エスコートする気力が俺にあるか。無い。俺はエッセイのお祝いを二度も逃したのだ。
それに第一、女を連れて回った場合、それは一人旅とは言えない・・・。
出発して20分、俺は道の駅を発見。
一応寄っておく。
足あとを残すんだ。
肉そば大盛を、軽くいただく。
一人旅の途中で誘拐されたときのために。
熱烈な俺のエッセイのファンは、俺が第60夜のお祝いを逃したことに気付いているだろう。
「え?浦島太郎がうな重を食べておしまい?先生らしくないな。
今夜は、なんらかの重大発表があるはずなのに。そう、お祝いだ、お祝いムードが無いんだ!」
そして熱烈なファンは、俺を愛するあまり、俺を疑ってしまう。
俺が、本当の「じゅて~む」の世界。
すなわち、恋愛世界に没頭してデート三昧で、馬鹿馬鹿しいエッセイから足を洗うのではないかと。
ファンは思う。
「断筆!
許さん!
達太め!」
嬉しいような、困ったような。
ファンは俺を探し出し、なんとしても俺にエッセイを書かせるだろう。
俺はファンに誘拐され、直江津あたりの駅前のビジネスに軟禁される。
ファンは俺の生態を完璧に理解しているのでデリバリーは絶えない。
カツカレー。ハンバーグ弁当。牛丼。
ベッドの上には薔薇の花束。もちろん39本。俺が39歳だから。
そうならないために、道の駅に俺は寄りまくる。
足あとを残すんだ。
警察にすぐに救ってもらえるように。
しかし。
道の駅に寄って、肉そばや、海鮮丼や、地元ポークの豚串や、特大豚まんや、メンチカツを頂くだけで、俺の足あとはしっかり残せているのだろうか。
俺は不安になる。
俺は顔はめパネルを発見する。
これだ。
記録するのだ、俺を。
俺は顔を、顔はめパネルに、ハメる。
そして、記録。
つまり、写メだ。
俺はパネルに顔を埋め、押し付け、
短い腕で俺を撮る。
パシャ、や、
カシャ。
繰り返す。
なぜ繰り返すか?
俺が映らないからだ。
パシャ。
カシャ。
何度撮っても、俺は映らない。
俺の腕が短いためか。
顔ハメパネルが、自撮りに向いてないためか。そんなわけあるか、このインスタグラム時代に。
やはり俺がムチムチの胴長短足で、腕も短い、そのせいだ。
俺は、顔ハメの自撮りを、映っていないが各道の駅で繰り返す。
大王イカの俺、
武士の俺、
朱鷺の俺、
芸妓の俺、
映ってなくていいんだ。パネルにうずもり、撮れていないのに撮ることが大事だ。
これで、熱烈なファンに誘拐されても大丈夫だ。
だが俺は熱烈なファンも大事に思う。
お祝いをしようじゃないか、第61夜に。
重大発表。
『あなたの街の達太』
募集します。
ご応募お願いします。
そしていつの日にかオフ会を。
皆でエッセイ「じゅて~む」を朗読し、ツッコミどころを共有するんだ。
場所はそうだな、
新潟市のブルーカフェがいいだろう。皆で朗読をしながら、達太の集団になったつもりで、メニュウに無い生姜焼き定食や牛丼を、マスターと美人女給にオーダーするんだ。
焼き肉食べ放題のようにカルビ追加を繰り返し、ビビンパ人数分もお願いするんだ。
書籍化が最大の夢だが、オフ会も、『あなたの街の達太』も、やろうな!
じゅて~む
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