じゅて~む エッセイ編 第80夜「シンデレラボーイ④」
【あらすじ】
N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。
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エッセイの副題に「シンデレラボーイ④」とあるため、読者は俺がエッセイの傍ら、ジュノンボーイだとかジャニーズだとかに応募し、のし上がっていくドキュメントルポを始めたと思っているだろう。
安心して欲しい。
俺は、達太。
体を絞ったりしていない。可愛い顔立ちにも成っていない。
平日は出前をとり、外食し、自炊も行い、39歳にして高木ブー似をキープしている。
出前と外食と自炊の両立。これは、自炊をするより難しい。
3食以上、しっかりモリモリ食べなければいけないし、それに合わせて腹も空かせていかねばならない。
だが俺はストイックに、やってのけている。
そんな俺は、ひょんなことから、王子にシンデレラを探すように、との命を受けた。
お安い御用だ。
深夜0時にシンデレラは急に舞踏会を後に、走り去った。
2軒目へ向かったと思われる。
昼間の労働、そしてダンス、彼女は腹が減っていたのだ。
俺も。もっと食べたい気分だった。だが。彼女の足が速かったため見失った。
「王子、明日の11時に中央公園へお越しください。」
「シンデレラに、合わせてくれるのか? でかした、達太とやら。
11時か、昼前だな。
では彼女とランチを共にしよう。
達太、お洒落な店の予約を頼む。」
「は?
王子は何言ってるんですか。」
「おま、達太、無礼だぞ。
俺に『は?』など言ってただで済むと思うなよ。俺には『は!』だ。」
「は!
しかし王子、彼女はやって来ませんぞ。私、達太のみです。11時に現れるのは。」
「は?」
俺に「は?」を禁じた癖に、王子はまったく自由奔放だ。
「は!
つまり王子。
私達は11時に集まり、この村の全てのレストラン、定食屋を、食べて回るのです。
『昨夜0時すぎに、定食を食べに美しい娘が訪れませんでしたか?』
『そうですか、失礼しました。他を当たります。』
おそらく、15時までかかるでしょう。男2人の昼飯三昧。
は!さすが王子、鋭い。こんなことをしていては我々の腹がはち切れるかもしれません。
ですが、ムッシュ?
あなたのシンデレラへの愛は、その程度ですか?」
「・・・いや。
では頑張ろう。だがムッシュは違う、それだけは言っておく。」
よく喋るこの王子にも男らしい一面があるではないか。
「は!では、王子、明日は腹を空かせて来てください。」
面白い展開になってきた。
明日は、王子とともに、この村のすべての店を回る。
本当に面白い展開になってきた。
どれだけ食べることになるんだ。
面白い展開だ。
「ところで達太、お前はシンデレラの何なんだ。」
「は!」
恋人であります!
は、さすがに違うな。俺は、シンデレラにとって、何だ。
「おい達太、シンデレラがめでたく見つかったとしよう。
私は彼女を妃に迎えようと思うが、問題はないな?」
「は!」とは言えない「は?」と言いたい俺がいた。
俺は、いつの間にかシンデレラに恋をしていたのか?
まさか。
確かに、俺より食いっぷりがいい美女には、この先出会えないかもしれない。
だが。こぶとりじいさんの前例がある。実際には小太りではなかった翁。
シンデレラも、大食漢とまだ決まったわけではない。シンデレラが大食漢の確率は、実は低い。
恋愛の雰囲気を纏ってきたな。
今夜は薔薇の花でも枕元に飾ろうか・・・。
棺桶のようになるか、ならないか、薔薇に囲まれ眠る俺。
じゅて~む
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