じゅて~む エッセイ編 第102夜 「具と貝」
【あらすじ】
N県新潟市やN県長野市でコント活動をする集団の、コント台本を担当している江尻晴子が、架空の男性・達太としてエッセイ連載にチャレンジ。
そして、達太の外見は、39歳にして徳川家康公にそっくりであった・・・。
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俺は達太、39歳、会社員。
日曜はエッセイスト。
として食っている。
とにかく食っている。
出前とったり。丼やったり。
エッセイストとして、生計は立ててない。とにかく偏って色々食べている。
ところが、今夜は金曜。
日曜は5、6日前に過ぎ去った。
エッセイをしなかった。
言い訳から聞いてもらおうか。
言い訳を堂々とその耳に叩き込んでくれないか。
コントライブに関わることになった。
エッセイストの俺が、コント台本を?
コメディエンヌ2人に、書けだと?
俺は想像する。
野犬に飛びかかられてしまう、コメディエンヌ2人を。
さあ、コントのスタートだ。
俺は2人を野犬から守れるのか!?
美濃「きゃー!野犬よ!」
小田島「誰か、助けて!」
達太「じゅて~む。どうなされましたか。何か、お困りごとでも?」
しまった。
俺は今回コント台本の依頼を受けたのに、つい、自分も登場してしまった。
だが、当然だ。
コメディエンヌ2人が、野犬に襲われているんだ。
正確には、そういう設定でネタを書き始めてしまったんだ。
男として、逃げ出すわけには、いかない。
俺だって怖い。
コントとはいえ、野犬だ。
野犬は立ち上がると俺より大きいのかもしれない・・・。
横幅は、もちろん俺が大きいのかもしれない・・・。
つまり、野犬は縦に、長い。
は?
野犬が縦長なんて、初耳だ。
小田島「野犬が今まさに飛びかかってきてるってのに、『何かお困りごとでも?』じゃ、ねえよ!」
俺はハッとする。
しまった、コント中だった。
俺はしっかりと正される。
達太「はいすみません。お二人は、野犬に飛びかかられて、困っておられるね。」
美濃「あれ、あれ、あたし、目が、おかしくなったかも。達太さんが手に持っているカツ丼がブルブル揺れているように見える!
あたしったら、高速の乱視?になってしまった?」
そうだ、俺はカツ丼を右手に持っている。
定食屋でカツ丼を食っていたら、二人の悲鳴が聞こえたので現れた次第。
そして野犬が怖いからブルブル震えており、俺の震えがカツ丼に伝播している状態だ。
ところで。は?「高速の乱視?」
美濃麻実子、色々すっ飛ばしても説得力がある、しかし力技ではない、変に丁寧だ。
まず俺の名前をもう知っているし、高速の乱視という新たな言葉に息を吹き込むのが上手い。
小田島「高速の乱視だよ、ソレ!
って、ええーーー!
私も、達太さんの手に持ってるカツ丼がブルブル震えて、見える!」
小田島美穂子、俺の手に持っているカツ丼を二度見。
しかし。こんな二度見は初めて見る。
さりげなさゼロの、ガッツリとした二度見。
下手なのではない、ガッツリなんだ。
おかわりできた気分だ。
豚骨ラーメンで替え玉した気分だ。
なんてコメディエンヌ達だ。
絶対に守る。
必ず守る。
何があっても、遠くにいても守る。
なんせ、俺の顔は紫陽花6個分もある。遠くからでもよく見える。だから守れるはず。意気込みだ。
紫陽花6個分の俺は、ブルブル震えながらも思考を巡らす。
「攻撃こそ最大の防御」
という言葉が俺の頭の中にポンと浮かぶ。
しかし。次いで「攻撃こそ最低の防御」という言葉も、俺の頭の中に、ポンポン浮かんだ。
それは、まあ、どうでもいい。
俺は攻撃に出る。
俺は野犬に飛びかかる。
ところが野犬は、痩せ細っており、
俺は野犬を抱きしめてしまう。
飛びかかったつもりが!
野犬はブルブル震えだす。
噛みつくどころではない。
俺は野犬が可哀そうになって、野犬の背中をなぜる。
野犬に落ち着いて欲しいのだが。
だが野犬は更にブルブル震えだす。
そして、俺だって野犬が怖いに変わりないからブルブル震えだす。
俺と野犬が抱き合って、ブルブル震える・・・。
それをコメディエンヌ2人が涙を流して見守る。
そういうコントライブに、なると、思いますか。
確認に、是非、いらしてみるのも、とても、いいかもしれない。
じゅて~む
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